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傷ついた天使
とんでもなくダサかったと思う。
人間に見られていた、絶対に笑われていた。
ふわふわと空の散歩をしていた俺は、飛び出していた枝を避けたつもりが距離感を間違えて羽を擦ってしまったのだから。
「……はぁ」
誰にも見られていなかっただろうか。
いや、人間には俺たち天使の姿なんて見えやしないんだから大丈夫だ。
それはそれとして恥ずかしい……。
俺は人間が来ないだろうどこかの屋根の上で羽を休めることにした。
引っかけたばかりだからか、羽がじんじんと痛みを訴えてくる。
羽ばたいた瞬間、風や振動で余計に傷が痛んだ。
痛みに耐えて近くの高層マンションの屋根に腰を下ろす。傷の状態を確認しようと羽を引っ張れば、白い羽が少し赤く染まっていた。
枝が刺さっているわけでもないし、傷はそれほど深くなさそうだ。
そのうちに治るだろう。
「プークスクス、天使くんったら木の枝に羽引っかけてやんのー」
バカにするような笑い声が聞こえ、俺は一気に顔が赤くなった。
俺の醜態を見られていたのだと思うと今すぐにでも消えたくなる。
いや、そもそも俺の姿は人間には見えないはずで……。
ならばこの声の主は一体……。
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