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「まーまー、まだ話してようよ。その傷の手当てしたげるからさー。オイラの暇つぶしに付き合って」
ふわりと屋根に降り立った悪魔は、俺が飛び立たないように傷のある羽を思いきり引っ張って止めた。
「いッ……!」
「あーごめんごめん、力加減ちょっと間違えちったー」
悪びれた様子もなく悪魔は笑う。
こういう相手のことを考えないところが嫌いだ。
基本的に天使と悪魔は不干渉条約が結ばれている。
日常的に会うことすらない。
こうやってたまたま相手を見つけることがあったとしても、こいつのように声をかけるようなこともない。
一切の関りを持たないのが暗黙の了解だ。
それなのにこの悪魔は、空中に現れた闇の渦に手を突っ込み救護箱を引っ張り出している。鼻歌を歌いながら、今自分で言った言葉の通りに俺の傷を手当てし始めた。
「……お前、なんで俺に話しかけたわけ」
俺は悪魔に触れられていることに落ち着かず身じろげば、動くなとばかりに羽を緩く引っ張られた。
「んー、暇だったしー。面白いもの見れたしー?」
「意味わからん……」
「前から何度か見かけたことあったんだよね、天使クンのこと。よくその辺飛んでるっしょー? 一回話してみたかったんだよねー」
「天使と悪魔は――」
「不干渉条約のこと? それとも暗黙の了解?」
悪魔はチラッと俺に視線を向けた。
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