傷ついた天使

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「そっちは? グチとかないの? 今ならオニーサンがただで聞いたげるけど?」 「いらない。そもそも悪魔の言葉なんか信じられるか」 「あらー酷い。ま、そんなもんだよねー、悪魔なんて。別にいいよ、オイラが話を続けるだけだから。話したくなったら天使クンも話してくれたらいいし」 「悪魔に話すことなんてない」 冷たく返せば、悪魔は少しだけ寂しそうな顔をした。 どうせ同情を誘う手口に決まっている。そんな手に乗るものか。 「まぁ、悪魔のイメージなんていいわけないよねー」 「人間はそれぞれの寿命がある。それを奪っていく悪魔がいい奴らなわけがない」 「でも願い事は叶えてるんだよー?」 「だから何だ。命に勝る願いがあるものか」 「天使クンさー、知ってる? 生きてることがとんでもなくしんどい人間もいるの。最後に少しくらい楽しい思いしてほしーじゃん? 少なくとも、オイラはそう思ってる」 悪魔は屋根から身を乗り出して地上を見下ろした。 残り火のようにチリチリと明かりを放っていた日がとぷんと水平線に消えた。 それだけで悪魔の横顔が見えにくくなった。 「他の悪魔は人間の貪欲さを面白がるのもいるけどさー。命を売ってまで手に入れたいもの、地位、権力、金、女、男……。そういうのが面白いと思わないでもないけど、オイラからしたらそれはただの人間らしさで、特別興味がそそるものでもないんだよねー」
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