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相手は悪魔だ。相手は悪魔だ。ここで信じて手を取れば、俺は天使としての立場も危うくなる。
俺が堕ちればこいつは俺に話しかけてきた時のようにプークスクスと嘲笑うだろう。
天使を堕とした悪魔として、向こうではもてはやさせるかもしれない。
悪魔の世界がどんなものか正確に知っているわけではないけれど、そんな勝手な妄想が俺を思いとどまらせる。
「どうやったら信じてもらえるかなー……」
「どうやっても信じない」
「でもここで別れたら、もう天使クン、オイラと話してくれないんじゃない?」
当然だ。それが言いに決まっている。
お互いにとって……一番。
「揺れてるでしょ。ねぇ。オイラと一緒にどっか行こーよ。天使クンと一緒なら悪魔でいられなくなってもいい」
「俺は……困る……から」
的確に俺の心の隙に入ってくる。さすがは悪魔だ。
「天使クン」
「だめに、決まってる。俺は天使で、お前は悪魔だろ。それに俺は今の居場所に文句はない。困ってもいない。お前と違って愚痴なんてない」
自分に言い聞かせるように悪魔に伝える。
「天使クン」
「俺は、悪魔のお前と一緒にいられるわけがない」
「さっきからずっと言い訳じゃん。そんなに嫌なら、オイラに好きって言われて気持ち悪かったとか何とかいえばいーじゃん。それとも優しさ? 恋愛対象をとやかく言うつもりはないとか言いたいの?」
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