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「ヤバい、興奮する。」
一言そう言い残し、その場から去って行った心陽君。
興奮するって、一体何に興奮するんだろう···。
私はドクドクと心臓をうるさく鳴らしながら授業を受けた。
駄目だ、絶対に心陽君に靡いてはならない。あの手のタイプは痛い目を見る。
そう何度も自分に言い聞かせた。
そして隣を見れば、やっぱり秋人が座っていた。
昼休み、相変わらず忙しそうな蓮見先輩を遠目に見ながら中庭のテラスでのランチ。因みに秋人は今も隣にいるが、今日はまだ一言もしゃべっていない。
蓮見先輩は違う学部のおじいさん教授3人に囲まれて、あちこちから話を振られ大変そうだ。
可哀想に···、と同情の目を向ければ、少し疲れた顔をする蓮見先輩と目が合った。
真っ直ぐと、鋭い眼光で私を見つめる先輩。表情は無に等しい。
でも私にはわかる。あれは、「かなりしんどい」と言っている目だ。
···先輩ってほんと、外では自分を抑えてるよな。。
そんな先輩からのSOSメッセージが、ランチ後すぐに入ってきた。
『3限終わったら部屋に来てくれ。頼む。』
私は深い溜め息をついた。このラインだけ見れば、深刻な相談でもあるのかと思ってしまうが、多分違う。
先輩はラインでもまだ自分を崩せない性質なのだ。
先輩の本当の姿を知っているのは、どうも私だけらしい。
実家の両親や兄弟にも本性は見せたことがないのだとか。
···別に、本性を見せられるのが嫌というわけではない。嫌、というわけではない····のだけど····
先輩は3人兄弟の長男ということもあり、世話好きで、困っている人を見れば放っておけない。それ故に皆に頼られるリーダー的存在。
誰にでも平等に接し、頭脳分野でもスポーツ分野でも優秀、教授や他の企業からも一目置かれる、日本の期待の星といっても過言ではない、スーパー学生だ。
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