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テラスで試算表の内訳に"シャワー室代"と書き込んでいると、蓮見先輩に「今日はありがとな」と自販機のHotミルクティーを差し出された。
私が笑顔で受け取ると、先輩がためらいながらも、そっと私の頭を撫でてくれた。
蓮見先輩の家は大手総合商社で、そのグループ会社は数知れず。幅広い分野で事業を展開している、超セレブだ。
秋人、琉生、蓮見先輩、彼らは何だかんだありながらも紳士だと思う。さすがおぼっちゃん。
「....斎藤に何かされたら、すぐに言えよ。」
「秋人みたいなこと言わないで下さいよ先輩~。」
「いや、4人の中ではあいつが一番危険な気がするからな。」
「......はは。」
先輩の野生の勘は恐らく当たっている。
心陽君は主人公で、当然漫画の中では一番出番が多い。だから私は彼の性格をよく理解しているつもりだった。
でも漫画での心陽君の姿は、全て幻想だったと身を持って体感することとなる。
蓮見先輩はまだ生徒会室での仕事が残っているからとテラスで別れ、心陽君と待ち合わせの自習室に向かっている途中だった。
「せーんぱいっ」
「っわ」
後ろから私の肩に覆い被さるように抱き付いてきた心陽君。
「やっと僕の番ですね!」
「ちょっと、心陽君、さすがに恥ずかしいよ...。」
心陽君は私を女子とみなしているのかいないのか、人目をはばからず、よくこうして抱き付いてくる。
「僕たち4人のルールに、"朱南先輩の肌に触れてはいけない"ってのがあるんですけど、"肌"ってことは服の上からならセーフなんで触れる時に触っとこうと思って!」
「.....へえ。」
庶民だからなのか、心陽君は少し貧乏性なところがある。
"触れる時に触っとこう"。それを意訳すれば、「勿体無いから今のうちに」とか「せっかくだから今のうちに触っとこう」となるのだ。
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