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3限が終わり、私は「よーいドンッ」で秋人をどうにか振りきると、蓮見先輩の部屋へと急いだ。
私が部屋のドアを叩くと、中から「入れ」と、今だ冷静な先輩の声が聞こえた。
「···先輩、お疲れ様です。。ええと、それで···ご用件は何でしょう??」
···靴も脱がず、玄関から白々しく聞く私。
先輩がヒョコッと顔を出し、私に「おいでおいで」をする。
部屋に上がると、先輩がポンポンとベッドを叩き、ここに座れと私を促す。
仕方なく真ん中にある机を避けて、ベッドの方へとゆっくり近づく私。
蓮見先輩は床に膝立ちをし、私がベッドに座るのをじっと待っている。
なんか飼い主を待っている犬みたいだ。
ベッドに腰を下ろすと、蓮見先輩が私を見上げて言った。
「···教授らに、お前の力で孫をどうにか就職させてやって欲しいと言われた···。」
「ええ···それ、前にも違う教授に頼まれてましたよね?」
「ああ···これでもう37人目だ。」
御曹司なんてこの学校に山ほどいるのに、何で皆蓮見先輩ばっかに頼むのか···
「先輩、顔が利くから大変ですね。」
「···うん」
「でも先輩はいつも皆の言うことに耳を傾けてて偉いですよね。」
「うん、そうなの。」
「私はちゃんと知ってますよ?先輩がとっても頑張り屋さんなこと。」
「うん、ポク、ガンパリ屋しゃんなの。」
大きな身体の先輩が、前から私の背中に腕を回し、ギュッと下から抱きついてくる。
···私は先輩の頭を撫で始めた。
「先輩、頑張り屋さんでいい子ですね。」
「うん、ポクいい子なの。イイコイイコなの。」
「···先輩、今日も髪の毛サラサラでいい匂いしますね。」
「うん、ポク髪の毛しゃらしゃらなの。いい匂いしゅるの。ちゃんリンシャンなの。」
オウム返ししかせんのかお前。
先輩が私にしか見せない顔。それがこれ。
先輩は疲れに疲れがたまると、赤ちゃん返りしてしまうのだ。
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