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「警察の調書によれば、先に死んだのが修道士七名。数時間後にピエトロ、だそうだ」
「じいちゃん、あんな状況で生かされていたのか」
ロレンツォの顔が曇る。
「孫の君にはかなり言いづらいのだが……。私が警察から入手した情報によれば、ピエトロには性交の痕があったようだ」
「……はあ?」
鼓膜が張って耳がキーンとした。
どういうことだ?
理解できない。
あの惨状を目にしながら誰かと?
その誰かって誰だ。
吐き気が込み上げてきて、手で口を覆った。
「犯人は女?」
「飛躍しすぎとは考えないのかい?女性はたまたまあの場にいて、たまたまうまく逃げおおせた、とか」
「できすぎている」
「じゃあ、大人の男八人の首を一晩で落とせる女なんていると思うのかい?」
「だったら、犯人は誰なんだっ?!」
「人―――あらざるものだろうね」
「化け物?はっ。ありえねえっ!!」
「この世の全てが分かるかい、君は?」
「これまで修道士しか殺されてこなかったのに、何でじいちゃんまで巻き込まれる?」
「調査中だ。いずれ捕まえる」
「あんた、美術鑑定士だろ?探偵もやっていたのか?それも人外の」
「当たらずしも遠からず。美術限定の探偵みたいなものさ。時に警察、裁判官もする。我が国の美術は、教会とともに発展してきたのだから、修道士だって調査の対象だ」
「でも、じいちゃんは葡萄とワインを作っていたただの農夫だ。知っていることを全部教えてくれ。今すぐに」
するとロレンツォが、家を出てさっさと車に乗り込む。
つられてサライも助手席に座った。
「頼むって」
せっつくと、ロレンツォがハンドルから片腕を放し、スーツの胸ポケットを探った。
手渡されたのは、血で染まった小さな紙切れ。そこには十一桁の数字が書かれている。
「看守に、君に返すものはないかと訪ねたらこれを」
奪い取って、親の仇みたいに握りしめる。
自分に何かあったらここに電話するようにと、何年も前に祖父から渡されていた携帯番号だった。
名前は知らない。
性別も。
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