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「は、はい」
「かしこまりましたあ」
泣きそうな声と陽気な声がホールに響く中、ロレンツォが寄ってきてサライの腕を取り自分の背中の陰に隠した。
「あれが、イタリア全土を騒がせている首切り犯だ。君が敵うと思うかい?」
あいつが?!
つまりじいちゃんを殺し、僕に罪を着せた?
ロレンツォにいろいろ聞きたいことがあるのに、声の出し方を忘れてしまったみたいに、何も言えなくなる。
目の前がふっと影る。
だから、顔を上げた。
(ロレンツォ公の背中ってこんなにデカかったか?)
倍以上の横幅。背丈も倍。
体型が完全に変わってしまっている。
服装だって、紺色のスーツを着ていたはずなのに、今は修道士のような黒いローブを羽織っていて、フードを被っている。
肩先から見えるのは、ギラリと光る穂先。鎌を担いでいるようだ。
「いつの間に着替えた?!」
すると、ロレンツォは振り返って目深に被ったフードの下から真っ白な顔を見せる。
どこにも肉片の無い骨だらけの顔を。
鎌。
骸骨。
つまり、
「死神?!」
彼は、サライの方を向いたまま、青いドレスの女が振りかざした剣を鎌の取っ手を使って器用に受け止めた。もう片方の手には、何かを入れるために持ってきたブリーフケース。戦いやすい姿勢ではない。
「ロレンツォ公の視野は梟並だな」
とチャールズがサライの襟首を掴んで舞台に上げると袖に引っ込ませる。
ホールにいるエヴァレットの側には、いつの間にか銀色の甲冑姿の少女がいて、
「行け。ジャンヌ」
彼が命令すると、青いドレスの女に斬りかかっていく。
その名で甲冑姿。
連想されるのはジャンヌ・ダルクだけれども。
「どっから出てきた?!」
再びホールに出ていったチャールズの隣には、勲章を肩に下げた軍服を着たクラッシクな中年男がいる。手にはアンティークなライフル。
そして、舞台中央にレオをともにいたイザベラの姿は無く、代わりにいたのはヘラクレスのような大男だ。
青いドレスの女が現れた途端、この部屋にいたロレンツォとイザベラの姿は代わり、エヴァレットとチャールズの隣には、見知らぬ少女と中年男が。
「あなたの相手はこっち」
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