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とヘラクレスのような大男がイザベラの声で冷静に言い、死神を攻撃していた青いドレスの女を引き剥がす。
バスケットからまたぼとぼとと生首が落ち、床に散らばる。
自由になった死神は、さっと舞台袖にやってきて、青いドレスの女を警戒しながらすすっと後退しサライを片腕に抱いた。
エヴァレットとチャールズの指示で、少女騎士と中年軍人が青いドレスの女を背後から囲んだお陰で、非常口への通路が出来た。
死神がサライを抱えそこに向かう。打ち合わせも無しに見事な連係プレイだ。
「う、浮いている?!」
「死神だからね」
青い絨毯が敷かれた廊下を猛スピードで飛び、非常階段へ。
そして、屋上に着くと上空に舞い上がる。
「あの女、まさか、イギリスにいるとは。そして、他の客には目もくれず、君に近づいてきた。やはり、そうなのか?」
と死神は独り言。
「浮いてるって!!」
「しかも、ドブネズミと組んでいる?」
「ロレンツォ公。なあ」
サライは、バンバンと彼の肩を叩いた。
「何だい、サライ?」
顔に肉片が一欠片もない死神がサライを見上げる。
うん。声は確かにロレンツォなのだが……。
「これ、どういうことだ?」
「カクカクシカジカってヤツ。あとで説明する」
「そんなので、こっちが納得するか!!あの女がじいちゃんを殺したのか?バスケットに男の生首をたくさん詰め込んでいた」
「空港から行きすがら、教会に規制線が張られていたのは、あの女が起こした事件だっらかもしれない。そして、未成年収容所から出された君もロンドンに」
「また、僕に罪を着せようと?」
「そんな些末な事件ではないよ」
「些末ぅ?!殺人犯にされそうになったんだぞ、僕」
「実に些末だ。我々の世界ではなね」
サライは死神の腕の中でもがく。
「なあ、あの女と戦ってとどめを刺してくれ!あんたなら勝てるだろ?」
「落ち着きたまえ。戻ったとしてももうRCの社屋から追い出されている。連中が捕まえたいのはドブネズミとアンジェロだからね」
「グルなんだろう?!」
「どうかな。あの女が素直に誰かの下につくとは思えない。だとしたら、やはり絵描きの差金か?」
「また絵描き?」
「あ、目メジャーの絵描きとは別だから」
「おい。あの女は、人じゃないよな?」
「まあね」
「あんた、さっき、絵描きって言ったな。そいつらが描くのは……」
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