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回廊型となっていて、地下一階、地上三階、屋根裏にはメイド部屋まである古い作りで築年は五百年を超える。
真ん中に芝生の庭がある。十字に白い小道が切られていて中央には女神が壺を逆さにした噴水がある。そこは車止め代わりにもなっていて、父親の車は無いので帰宅していないようだ。
バーントの死神は上空でぐるりと旋回。そこから、猛スピードで二階のとある部屋に突っ込んでいく。アンジェロの部屋だ。
吹き付ける風で顔の肉がめくれ上がりそうだった。
「ぶつかるっ!ぶつかるってえええっっっ」
連呼するが、スピードは緩まない。大きなガラス窓が迫ってくる。
閉まった窓の先は、勉強机とデスクトップパソコンが置いてある。
バーントの死神が指先をそこに向けると、窓が勝手に開いた。そして、そこを通り抜けるのにアンジェロの身体にガツンッと大きな衝撃。
押し出されるボールみたいに死神の腕の中から投げ出される。バアンッと身体が弾み、気づいたらベッドの上だった。
「イタタタタッ」
何とか上体を起こすと、窓辺の机にバーントの死神が片膝立ちで座っていた。左手で落ちかけるデスクトップパソコンのブラウザを抱えている。
いや、そこに不時着したと表現した方がいいのかもしれない。
右手は鎌の取っ手を掴んでいて、鎌の先は窓の外。
どうやら、窓の桟に鎌の先が引っかかり、その衝撃でアンジェロは部屋の内部へ投げ出されたらしかった。
バーントの死神は、パソコンのブラウザを机の上に慎重に戻すと、窓の桟に突き刺さった鎌の刃先を引き抜く。パラリと外壁の一部が剥がれ庭に落下していくのが見えた。
身体を窓の外にひょいと出しその傷を確かめ「……」となった後、鎌を部屋の内部に入れたバーントの死神は、何事もなかったように鎌を内壁に立て掛ける。
「アハ、アハハハハ」
誰かが笑っていた。
自分だった。
「もう、何がなんだか」
シェルターに逃げ込んだような気分だった。
居候みたいなものでも、八年暮らした部屋だからだ。
「あれ、今更、震えが……?」
鎌を手放した死神が、壁に持たれ腕組みをしてアンジェロを見ている。観察されているようで落ち着かなくなった。
「な、何?」
聞くと迷った足取りで側に寄ってきて、アンジェロの側に立つと、背中をぎこちなく擦る。
骨の手は硬かったが、びっくりするほど安心感があった。
幼い子供が親にされてほっとするような、そんな感じ。
恥ずかしくて、「ありがとう」と言う声は極端に小さくなった。
死神の行為はわずか数秒で、壁の鎌を手に取ると再び窓辺へと向かった。
そして、別れを告げるように手をすっと上げ外に飛び出していった。
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