第三章*未来

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おかゆを作って食わせたあと、 強引に寝室に連れていき彼女を。 「え!嫌だ…。」 ベッドを指さして、横になるように示したが。急に甘い声で嫌だと言ってきた。 「なら…。」 俺は携帯を取り出し、救急車を呼ぶふりをしてみせた。 「それも嫌だ…。」 甘えてみせて、この状況を逃れようとしているのがわかった。 俺も…ケダモノ化を押さえ負けじと応戦した。 「だったら、うん!」 掛け布団をめくって、顔で寝ろと指示したが…彼女はベッドを凝視して俺をみた。 「あ?シーツなら毎日変えてる、バイキンみたいに見るなよ。」 「海人と、話してたら…。」 「さんな?」 「はぁ、めんどくさっ…。」 「は?」 「話してたら…眠くなくなったもん。」 「は?まず、そこ座れ。」 ベッドに腰掛けさせ…。 「は?なんて顔で俺を見る?」 彼女はあからさまに、両手を胸元で交差させた。 「そんな青白い顔してるやつ、襲うか!寝てろ!」 「フフッ、赤くなった。いいのに…。」 「グッ…良いのにとか言うな。」 誰かが、俺達の仲をとがめる事がない、 なんてことぐらい俺だってわかってる。 だけど、彼女は夢だった女優として輝き出したばかりだった。 本当なら…俺なんかと、関わらせたくない。 いつも俺が眠る… ベッドに彼女は横たわった。 「本当に、シーツ変えてるんだ…。」 「なに?臭うか?」 「フフッ…ううん、」 「ヘラヘラしてないで…寝ろ。」 「え?」 また、胸元で両手を交差させていた。 「アホか、ちゃんと手…入れて。」 ふぅ。 ふぅ…って、俺最低だな。 彼女の夢は必ず俺が守って見せる。 掛け布団に手を入れさせ、彼女に背を向けた。 「眠る…までいてくれないの?」 「は?子どもみたいな事、いっ…てないで。」 ふいに彼女に腕を捕まれ、自分の足に絡まり俺は彼女に覆いかぶさるように倒れ込んでしまった。 「…な、…目なんか閉じるな。」 「好きだから、ずっと、あの頃から…愛し、」 俺は彼女になにも言わせないように、 唇を重ねた。 「俺が…言うから、けど…今はちゃんと健康で毎日過ごせるように努力しろ。メシもちゃんと食え、ちゃんと寝ろ、独りで無理ならメシも付き合う。寝るのも見届けてやる…わかったか?」 「…。」 彼女はただただ、頷いた。 「返事は?」 「うん。」 「…はい、な?」 「フッ、めんどくさっ。」 あの頃と変わらない、 俺の心に光を灯してくれる笑顔を 魅せてくれた。 「そう、笑ってろ。」 「うん…はい。だったね。」 「そう。」 俺等は顔を見合わせて、笑顔になっていた。
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