第五章*嫉妬

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「なおちゃん?この間、僕が言ったこと…本気だからちゃんと考えてね。」 彼女に微笑むと、彼は俺の存在はなかったかのように…背を向け店に入っていった。 「…俺の存在無視か?」 「だね。」 「だねぇって…。」 なおは嬉しそうに微笑んでいるだけだった。 「アイツが言ったことってなんだ?」 「うん?知りたい?」 彼女は急に俺の顔に近づき、舐め回すように大きな目をよりあけて俺を…見つめてくれていた。 「…へ?あ、いや…別に。」 「そう。」 「うん?」 彼女もまた、俺の存在はなかったかのように俺に背を向けて店に戻ろうとしていた。 「あ。」 「うん?お疲れ様でした。」 「なんだよ〜話したいんだろ?」 「ううん。」 …なんだよ。 急に、大人の顔して…って、もう出会った頃の高校生なんかじゃないのはわかってるけど。 「なお。なんで、アイツ…あ、その…さっきのやつといい、全員お前を本名で呼んでるんだ?頼んだのか?」 「ファンだから…。」 「ファン?ファン、そうだよな。」 「うん。」 またすぐに…背を向けた。 「なお…。」 行ってほしくなくて…俺は呼び止めていた。 このまま、一緒に。 「ね?海人…さんもみんながいるところでは、私の事…アオイって呼んだほうが良いかもしれない。海人さんが、困るような報道されたら嫌でしょ?」 そんな事、言われるとは思ってもなかった。 「…。」 違うって…どうして俺は即答しなかったんだろうか? 「ね?もう、ほら…私も芸歴長くなってきて高校の〜なんて言える年齢じゃなくなってきてるじゃない?仲いいんですね〜って、言われて終わればいいけど。海人さんが困るのが嫌だから…私も気をつける。」 「あ、ああ。」 どうして…困らないって、言えなかったんだろうか。 なんの、プライド? とうの昔に、教師として立っていられず… 辞めたのに。 なおにとって…好きだと言ってくれた先生でいたかったのか? 先生だから、好きなんてそんなふうに言われたわけじゃなかったのに…。 先生になったから、彼女の大事な高校三年間の時を過ごせ今がこうしてあるのに。
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