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第三章*未来
彼女の英語力は、俺が教えなくても…
充分通用するレベルだった。
「ここの発音だけど…。」
「うん?あ、」
俺も、きっとなおもだと思うが…
あの頃と変わらない気持ちはあるものの
お互いに口にするつもりはなかった。
いや、俺だけなのかもしれない…。
俺はなおに言ってほしいのか?
なおは…俺が言うのを待っているのか?
俺を探していたと、聞いて…
再会して
一ヶ月が過ぎようとしていたが、
俺もこれまでの仕事と
忙しいなおの頼み事と
日々、お互い時間に追われていた。
「翻訳の仕事…大変なの?」
「え?」
気がつけば、互いに見つめ合っていた。
「ああ、いや。」
「海人、寝れてる?」
「うん?ああ。貧乏暇なしでいいんだよ、人のこと気にしてる場合じゃないんだろ?」
ふと、
俺は彼女の顔にかかっていた髪に触れていた。
「あ、悪い…。」
俺の手…
勝手になおに触れてたな、恐ろしい。
「うん?」
髪を耳にかけた彼女を見て、俺は…心配になってきた。
一段とやつれてないか?
「お前こそ、ちゃんとメシ食ってないだろ?昨日の晩…なに食った?」
「え?なんだろう?」
「は?俺と夕方別れたあと、夕飯食べる言ってたろ?」
「そうだっけ?」
スッと立ち上がった俺を、青白い顔で見上げていた。
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