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俺は、いつかのあの日のように
彼女の手を引き
彼女を自宅に連れてきた。
「メシ…食おう。」
「…。」
彼女はずっと、無言だった。
ズッポリと顔が隠れるほどフードを被り、
いまだ顔を見せてくれなかった。
「…なお?」
「はい。」
ようやく、顔を見せてくれたかと思ったが彼女はそのまま椅子に転げ落ちるように倒れた。
救急車を呼ぼうかと思ったが…
すぐに意識を取り戻った彼女に止められた。
「ちょっとめまいがしただけだから…平気。もう一回呼んでくれたら元気出そう。」
「うん?」
自覚はなかったが、
今日の今まで…
俺は彼女を名前で呼んだことがなかった。
教師だった時も…
あの頃は、特に彼女を呼べなかった。
それも、彼女だけ…
おい。
そう呼んでいた。
「あ?ご飯食うの忘れつやつ、呼んでやらん。ちゃんと食べるか?」
「うん。」
「よし!じゃ、なおはなにが食べたい?」
「フッ、海人が…。」
「さんな?」
「二人だけの時は?」
「癖になるから、ダメだ。」
「海人さんが作るカレーが食べたいです。」
「あ~今度な、おかゆにしよう。」
「フッ、聞く必要なくない?」
「文句言えるなら…救急車は呼ばなくて良さそうだな。」
俺は、抱きかかえていた彼女をソファーに座らせた。
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