第2話 カエル男

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 封鎖された魔都、東京に繋がる遊園地跡に私は、立っていた。  強固なバリケードと自衛隊、警視庁の機動隊により封鎖された魔都だけど、県境に位置する大きな遊園地跡は、通行止めやバリケードがなく、警備も手薄と聞いていた。  その分、園内で怪人に出会してしまう危険もあるけれど仕方ない。  私は、女子校の制服を着て、背中のリュックに水や缶詰などの食料品や着替え、地図やコンパス、懐中電灯に電池類などを詰め込んでいる。  いざというときの武器として、鉄パイプを背負い、腰のベルトに護身用の防水型スタンガンを付けた。  これでも人間離れした身体能力と強力な殺意を持つ怪人には敵わない。直接戦うのではなく、窮地を脱するための装備だ。  誰もいないチケット売り場と入場ゲートを通り抜けた私は、遊園地跡に入る。  開園から半世紀以上の歴史を持つ遊園地は、広大な敷地に複数のエリアからなるエンターテイメントパークだ。40種類以上のアトラクション、ものづくり体験、綺麗なイルミネーションに、南国リゾートのようなプールが楽しめた。  東京で一番大きな遊園地で、家族で遊びに来たこともある。  園外からも見える大観覧車が私は好きだった。春に訪れた時、ゴンドラから眺めた桜の絨毯(じゅうたん)は、忘れられない思い出だ。  殺意症候群は、そんな思い出の地を、憩いの場を瞬く間に廃墟へ変えてしまった。
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