第2話 カエル男

4/16
前へ
/87ページ
次へ
 入場ゲートを通り抜け、園内マップを拾い、スカイシャトル乗り場やレストラン、メリーゴーランドなどが並ぶ広場に出る。  開園時なら大勢の人々が行き交う広場だけど、今は誰もいない。  シャトルが動いていないため、歩いて広い園内の北端まで向かわなければならない。北側のゲートを抜ければ魔都へ辿り着く。  園内が怪人だらけということはないみたい。  広場のレストラン群を慎重に歩いていた私は、メリーゴーランドの前に出る。  メリーゴーランドは、馬だけでなくパークのマスコットキャラクターである犬にも乗れるのが特徴だった。  弟と一緒に遊具にまたがった記憶を思い出していた私は、驚いた。  メリーゴーランドの前に、まだ4、5歳くらいの女の子が寂しそうに立っていたから。 「えっ?」  女の子が、どうしてこんなところに?  長い黒髪を2つ繋ぎにした少女は、白いワンピースを着ている。不安そうでつぶらな黒い瞳が印象的だ。 「おねいたん……?」  少女が私に呼びかける。  眼は黒い、怪人ではない。 「どうしてこんな場所にいるの?  お父さんかお母さんとはぐれちゃったの?」  私が訊ねると少女は頷いて、 「おとうたん、いなくなっちゃったの」  涙をこすりながら伝えてくれた。  少女は、迷子のようだ。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加