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「……ご」
「ん?」
「ご迷惑お掛けしました……」
「やだな。そんなに畏って。別に脅してるわけじゃないよ。さ、冷めるから食べて」
ピンク頭が屈託ない表情で手を広げた。
ーー冷静になれ。
俺は箸と汁椀を取った。ズズズと味噌汁を飲みながら部屋を見渡した。人は見た目で決めつけてはいけない。確信した。
塵ひとつない部屋だ。若いのに家の事にまで気を回して立派としか言いようがない。洗濯物が干してあるとかそういう生活感が一切ない。越して来てから間もないのか?
壁面に畳一畳ぐらいありそうな絵が飾ってあった。ナンの絵だ?
視線を戻すと、俺の前に座ったピンク頭が食べもせずニコニコと俺を見ていた。
「何? 今日は仕事だって言ってたよね。在宅? 俺も一日ここにいるから、ここでやったら?」
「いや」
「Wi-Fi、繋げるといいよ」
「いや、それはさすがに。食べたら帰……」
「昼はお好み焼き、夜はパエリアにしようと思ってるんだよね」
さっきからこいつ、何言ってんだ!
「メチャクチャいいな、それ!」
俺は結構大きめの声で彼を肯定した。彼は吹き出して、
「いいだろー」
と言った。
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