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第二話
メッセージが届くようになった。あのピンク頭の男から、必ず金曜昼時。
それも早五週目。大袈裟で仰々しくわざとらしい時候の挨拶と、今晩のメニューが書いてある。
俺はいつも、「行く」とだけ返事する。
最初に会ったあの日、俺の仕事中に俺のスマホを顔認証で勝手に開けてきて何かしているとは思っていたが、メッセージアプリの連絡先を繋げていたようだ。私用スマホなんて買い物やジムの会員証ぐらいにしか使わないからと好きにさせてしまった。それでも直ぐに取り返したつもりだったので、連絡が来るまで彼の戯れに全く気づかなかった。
尚、アプリには彼の名前が『坂巻』で登録されていた。
いつも通り残業をして退社し、会社から歩いて十分の、彼が待つマンションへ。持たされているカードキーでゲートを通りエレベーターに乗り、上階の部屋へ向かう。
部屋の扉を開けるとカレーの匂いがした。
勝手知ったる家の中に入る。廊下の途中の洗面所で手を洗い、彼のいるところへ。
「おかえり」とキッチンから言われたので勘違いしそうになった。
「ああ」
若い友達が出来たと思えば、まあ。と自分を納得させる。
キッチンから現れた彼にささっとコートを脱がされ、更に奥に通され、椅子に促されて座ると絶妙なタイミングでカレーライスとサラダが出てきた。
「いただきます」
少し辛めのカレーライスを掻っ込む俺の目の前に座って、ニコニコしているピンク頭の男。
どうかこの関係は不問にしてくれ。
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