第二話

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 その晩も坂巻は俺のベッドにやってきた。  これは俺の試練だ。  丑三つ時。寝惚けた坂巻が俺の背中に張り付いてきた。俺は背中に感じる久しぶりの人肌に下半身が反応した。煩悩を払う為の除夜の鐘を聞いたばかりだぞ。落ち着け。  部屋には謎の仏像がある。  暗闇の中でだって、俺達を見ているに違いない。  煩悩退散。南無阿弥陀仏。  その内に良い匂いがしてきて、凄まじい眠気に誘われて気づけば、朝。  朝どころか、とうに昼は過ぎていた。どれだけ寝たんだ俺は。リビングに行くと坂巻はソファに座ってテレビを観ていた。傍に寄った俺に気づいて立ち上がり、 「明けましておめでとう」  正月だ。 「明けましておめでとう」  俺がテーブルに着くと直ぐに雑煮が出て来た。  テーブルの上には工芸品のような螺鈿の重箱が載っていた。  坂巻によって広げられた重箱の一段目は見事に盛られたおせち、二段目は煮物、そしてなんと三段目には様々なデコレーションがなされたチョコレートマフィンが詰まっていた。    今日の坂巻はデニムのエプロンの下に肩甲骨が覗き見えるシャツを着ている。正月らしくはない。それを言ったら全身スウェットで無精髭の生えた俺の方が新年を迎えるには酷い姿なわけだが。    坂巻は、昨晩もエアコンを消した部屋で寒がって俺に張りついてきたのに違いないのに、基本薄着だ。  俺に噛めと言わんばかりの、薄着。  そのシャツを剥いで、仰け反る彼を掻き抱いて、よがる彼をベッドに沈ませて、それから。    俺の前に座った坂巻は俺の欲情に惑わされた苦悩など知る由もなくニコニコしていた。  
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