第一話

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「え?」  甘やかしてくれ。  優しくしてくれ。  誰でもいいから。 「もう頑張れない」 「は?」  急激に気が抜けた。俺はカウンターに勢いよく突っ伏した。  目頭に涙が溜まるのが分かった。  不条理に憤るばかりで、肝心な感情が胸の奥底に追いやられていた。と気付いた時にはもう遅い。俺は自分の腕に沈み込んだ。 「間違ったかな」  そう言って男が体を引いたのがわかったので、その時だけ腕を抜いた。そして男の腕を引っ捕まえた。 「待て。逃げんな」  俺はもう涙目。男は引き気味。  こんな酒場での出会い、一期一会だ。どう思われてもいい。俺を支えて体勢を崩した男の眼鏡は傾き、俺達はまた接近した。形の良い眉毛に長い睫毛、俺と違って澄んだ目をして、おまえはモテるんだろうな。こんな店に若い内から出入りして、人生イージーモードだろ……。 「ちょっと、何すんの……」    視界が閉じて行く。  意識が。 「おい……、おい! オジサン!?」  俺の記憶はそこまでだ。
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