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「え?」
甘やかしてくれ。
優しくしてくれ。
誰でもいいから。
「もう頑張れない」
「は?」
急激に気が抜けた。俺はカウンターに勢いよく突っ伏した。
目頭に涙が溜まるのが分かった。
不条理に憤るばかりで、肝心な感情が胸の奥底に追いやられていた。と気付いた時にはもう遅い。俺は自分の腕に沈み込んだ。
「間違ったかな」
そう言って男が体を引いたのがわかったので、その時だけ腕を抜いた。そして男の腕を引っ捕まえた。
「待て。逃げんな」
俺はもう涙目。男は引き気味。
こんな酒場での出会い、一期一会だ。どう思われてもいい。俺を支えて体勢を崩した男の眼鏡は傾き、俺達はまた接近した。形の良い眉毛に長い睫毛、俺と違って澄んだ目をして、おまえはモテるんだろうな。こんな店に若い内から出入りして、人生イージーモードだろ……。
「ちょっと、何すんの……」
視界が閉じて行く。
意識が。
「おい……、おい! オジサン!?」
俺の記憶はそこまでだ。
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