17人が本棚に入れています
本棚に追加
広い風呂に浸かったことですっかり緊張が解けた俺をリビングへと導く男は白いTシャツと迷彩柄の短パンの上に黒地に白のドクロ柄のエプロンを着ていた。そしてその下に伸びる生足を見て俺は再び大混乱だ。
足に毛がない! 男じゃないのか? 何で? え? ビジュアル系……? 俺の頭の中は若干パニクッた。
「仕事で脱毛したんだよ」
不意に振り返った男にあからさまな視線を気づかれた。
「あ、そうなんだ。へー……」
何の仕事? 聞きたいことは山程あるが、深入りするのも怖い。この若さでこんな高層高級マンションに住むなんて一体どういう出自だ。カタギじゃない? まさか、金持ちの愛人?
「今用意するから、待ってて」
「え?」
何を? そういえば、飯が出てくると言っていた。
ピンク頭はアイランドキッチンに入って、手際よく支度を始める。放っておかれた俺は所在が無くなり、その辺に置いてあった椅子に座ることにした。テーブルもないのに置かれる椅子は大概高いやつだと思いながら。
ピンク頭は軽妙に俺に話しかけてきた。今朝方は酷い雨が降っていた、昨晩通り魔的事件があったようだ……。次々と話題を変えて、とめどなく話し続ける彼に俺は「ああ」とか「へえ」とか適当に相槌を打ちながら、これからどうすべきか、頭をフル回転させていた。
何だ、この状況。
不幸中の幸いで、俺は焦ったとき動揺が顔に出ない、らしい。
「そこに座って」
今度はテーブル前の椅子を勧められた。俺は「ああ」と気の無いフリして移動した。
最初のコメントを投稿しよう!