マリナのいない夏

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「それならどうして屋上なんだ? あの日、マリナが補習を受けていた教室は屋上から一つ下の四階だった。教室にはスマホが抜き取られた鞄が置いたままになってたそうだ。なぜ飛び降り自殺するつもりだったのなら教室の窓から飛び降りなかったんだ? わざわざスマホを持って屋上まで移動する必要はない。何者かが彼女を屋上まで呼び出し、突き落とした。そう考える方が自然じゃないか」  ヒロはさもこれが真実だと言わんばかりに自信たっぷりに言った。もし彼の推理が正しいのだとしたら、マリナは誰かに恨まれて殺されたことになる。そんなのいつも明るく笑顔だった彼女の終わりにしては悲しすぎるじゃないか。  僕はノートを仕舞うと席に戻る。緊張のせいかやけに喉が渇き、目の前にあった紙コップを手に取りジュースを喉に流し込んだ。甘ったるい味が口の中に広がる。それから去年より痩せたヒロの顔を見上げた。 「遺書はどう説明するんだよ。彼女は『疲れた』とSNSに投稿しているんだぞ」 「そんなの簡単なことだ。犯人がマリナのスマホを奪って書いた。それで説明がつく」 「でも全部憶測の域を出ないだろ。そんなことをする奴が本当にいるのか?」
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