マリナのいない夏

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 ホームセンターで買ってきたミニ黒板を壁に設置し終えた時、ちょうどインターホンが鳴った。僕は返事をして玄関ドアを開ける。途端にムッとした外気が身体にまとわりつく。 「あ、みんな一緒だったんだ。暑かったでしょ」 「ちょうど駅前で会って。カントクのヤツがつーちゃんと待ち合わせしてたらしくて車に乗っけてもらった」  一年前より少し痩せたヒロが背後の二人に「なっ」と声をかける。彼の後ろには二人の女の子がいた。カントクとつーちゃんだ。カントクは相変わらず小麦色の肌で、鍛えられたしなやかな身体つきをしている。一方でつーちゃんは、大学生になって化粧を覚えたようで少し華やかになった。だが大人しめの印象はまだまだ健在だ。 「カントク、免許取ったの?」 「まーね。春休みの間に取ったよ。ほら私、スポーツ推薦だったから暇だったし。なんならドライブに連れて行ってやろうか、少年?」 「誰が少年だ。僕はエノだ。お前だろ、このあだ名つけたの。『榎田だからエノね』って適当につけやがって。すっかり浸透したじゃないか」
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