かけがえのない家族

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「ほんって、おもわないんじゃないかなぁ……きたないし、かたちも、それっぽくないもん」 「大丈夫。立ち止まって、見ようとするよ。あの本がたとえ、この先も世に出ることがないかもしれない、そんな、それらしい見た目をした本であってもね」 妹は姉の話を聞いても、まだ顔を曇らせていた。この後、あっけなく消えてしまうその本は、もう一人の姉であるハルにとって、思い入れのある本だ。 「きづいてほしいな……きづいてほしいよ……」 あまりに不安で背中を丸める妹を、姉は優しく包んでやる。そして視線を、もう一人の妹であるハルに向けたまま、そっと切り出した。 「大丈夫だよ。私達が思っている通りに気付けなかったとしても、ハルは絶対、他のことに気付けるから。本が導いてくれるよ」  どんな一冊にも、その人の表現したいことや、伝えたいことがある。どんな人にもエピソードがあり、その人が書く生きた言葉がある。たとえそれが不完全な出来であっても、列記とした本なのだ。そして必ず誰かに届く。だから表紙には“LEGEND(伝説)”と記されているのだ。  姉がそうつらつらと話していると、本が蹴飛ばされる音がした。
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