かけがえのない家族

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「みて! よんでるよ! あれ、ないてる……そんなに、かなしいことばだったかなぁ……」 そわそわする妹を横に、姉はじっとハルの動きを待った。  “決して おそれるな 信じて前に進みなさい”  二枚の大きさ違いの羽が挟まれたページを開いた時、その一文が炙り出される仕掛けになっている。それを綺麗ごとと取るのか、ベタだと感じるのか、鼻で笑うだけなのかは自由だ。しかしそこから、なぜその言葉があるのかを考えられるかどうかで、世界は変わる。 「あ! ねえちゃんが、あるきだしたよ! なんか、あしがかるくなったみたい!」 「ほらね。また勇気が湧いたのかも」 姉妹は、足の痛みも忘れたような、大股なステップを刻んで歩き始めたハルに微笑んだ。そして互いに頷くと、母がくれた大きな翼をはためかせ、ふわりと微光の尾を引きながら浮かび上がる。  曇天が、天使の羽で僅かに煌めいた。望んでいた形で人生を共にできなかったが、今の在り方もまた、三姉妹と両親の特別な繋がりだ。家族の輝きが、羽に乗って揺れながら消えた―― fin.
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