鍵はその手に

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 楓が私に願いを聞いた時。  その時、頭に浮かんだのは、「この苦しい毎日から抜け出したい」ということだった。家に帰れば、母がずっと後ろに立って勉強を見ている。少しでも間違えると、すぐに指摘される。考える時間が長くなると、ため息が聞こえてくる。家にいて安らぐことはなく、帰ることが怖かった。  でも、こんなこと誰にも言えないし、心配されるのも嫌だった。だから、楓の言葉に乗った。  高梨君のことは気になってはいた。でも、それ以上にいつも監視され小さなことで怒られる毎日から抜け出したいと願った。救い出してくれる人を求めた。ここから抜け出せたら、私は幸せになれる。そう信じていた。  その願いが、これで叶う。
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