スタリエ書店

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 最初はその本の量に圧倒され、二人とも諦め気味だった。でも、せっかく来たことだしと、とりあえず棚を眺めることにした。  楓と離れて背表紙を眺めていると、少し離れたとこから声がした。 「これだ!なんかそんな感じがする」  そっちを見ると、楓は嬉しそうに本の表紙を見ている。私もあまり期待せずに背表紙を見ているが、第六感が働く気配はない。 「葵はまだ見つからないの?そういえば葵は何を願うの?」  目的を達した楓が隣に来て、聞いてきた。 「私は・・・・・・」  少し考えたが、そういえば何も願わずに本を探していた。そこで改めて自分は何を願っているのかを考えた。 「分かった!高梨くんのことでしょ。格好いいもんね、彼」  ほのかな思いを知られていたことに対する気恥ずかしさで照れ笑いをしながら棚を見ると、そこに1冊だけ微かに光っている単行本があった。かぐや姫みたいだなって思いながら、その本を手に取った。表紙には扉が描かれている。楓がその表紙を覗き込んでくる。 「『鍵をめぐる物語』?葵はその本なんだ。私はこれ」  と言って、楓は持っていた本を見せてくれた。題名は『恋心』だった。    買い物を済ませて外に出ると、スマホを見た楓が驚いた声を上げた。 「もうこんな時間!早く帰らないと!じゃあ、また明日。一気に読んで願いを叶えよ」  それだけ言うと、楓は手を振って走って行ってしまった。私も手を振り返して、重い気分を振り払うために走って家に帰った。
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