あなたのために

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 ようやく塾の時間になった。しかし、テストの書き直しは終わっていなかった。母はため息をついた。 「もう時間ね。残りは帰ってからにしましょう」  私は気力を振り絞って「はい」と答えた。  後ろからずっと見られ、少しでも歪んだ字を書いた瞬間に「ここ歪んでる」と言われ続けるのは精神的に苦しく、何度同じことをされても慣れることがなかった。  家を出る時、リビングに父がいた。  父はソファに座り、本を読んでいる。私や母に興味がないのか、父はいつも本を読んでいた。  話しかけられることもなく、こちらから話しかけることもない。  母の教育がつらくなり始めた時、父に言ったことがあった。しかし、父は私の話に耳を貸す様子はなく、ずっと本を読んでいた。  それ以降、父に何か話す気はなくなった。
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