0人が本棚に入れています
本棚に追加
狂刀のヘンバー
俺たちに白い翼などないのだ。
あるのはただ、赤く染まった汚い翼。
悪魔の翼。
そう教えてもらった。
【狂刀のヘンバー】
曇り空がやけに黒く、雨は鋭く降っている。
その下で俺は墓石の上に座っていた。
長い栗色の髪。輪郭は細長く、肌は青白い。すらりとしたその体は生まれつきなのか、それとも食べていないせいなのか分からない。それほどまでに俺の体は昔から痩せ細っている。
そして、全身が赤い血で汚れていた。
俺はぐったりと座って目を瞑り、片膝を立てて、その上に腕を置く。
森の奥の墓場の下には、恐ろしく赤い彼岸花が咲き乱れていた。
彼岸花を見ると思い出す。
涙を流しながらお祈りをしている赤い髪の女のことを。
生気のない目をゆっくりと開く。
俺は彼岸花に話しかけた。
「祈りなんて無駄だ。望み、祈り、夢、願いも無意味だ。叶いはしない」
俺は打ちつける鋭い雨を気にせず、ただただ、いつまでも黒い空を見つめていた。
軽く背中に触れ、そして空に向かって言い放つ。
「神よ……なぜ俺は生まれてしまったのか」
憎しみと悲しみと、そして後悔の混ざった顔で神を呪う。
俺は過去を振り返った。
「あの時も雨だった」
最初のコメントを投稿しよう!