母の日記帳

7/10
前へ
/10ページ
次へ
 だけど願いが叶う事なく半年後、堀川弥生の訃報が。  どうしよう。  どうしよう。  お母さんはあの計画を実行するかもしれない。  家族が……。  今までの思い出が……。  壊れる……。  お母さんを止めなきゃ!!  お父さんが仕事のトラブルでしばらく横浜を離れると聞き、私は『お母さんの体調が心配だから』と実家に帰ることにした。  私が住んでいる名古屋から横浜へと急ぐ。  実家に到着したのは夕方。  玄関を開けリビングに入ると、母は嬉しそうだった。 「あら?お帰り千夏」 「た……ただいま」  持病のためお酒は控えていたはずなのに、母の側には封を開けた赤ワイン。ワインのラベルに見覚えがあった。  「お母さん!そのワインお父さんのとっておきの!!」 「私が結婚するときお父さんといっしょに飲む約束していたのに」  母は私を見ると微笑み。 「何言っているの?そんな日は来ないわよ」 「はあ?どういう意味?」 「あら?千夏が結婚出来ないって意味じゃないわよ」  完全に酔っ払っている。 「お母さん酔いを覚ましたら?」  母はそれもそうねと、リビングにある風呂のお湯張りのスイッチを押した。 「もう少しよ。もう少ししたら母さんの願いが叶うの」 「うふふ」  目の前の母は親ではなく、ただの気持ち悪い女だった。    
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加