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「……それ、どこに」 「ずっとここに」  彼女は持っているラブレターを少しだけ移動させた。  赤いハートが彼女の心臓と重なる。ブレザーの内ポケットの位置だ。 「このラブレター用意したの、私なの」  彼女の告白に、僕はすぐに言葉を返すことができなかった。  スムーズ過ぎないか、とは思っていた。  なんでも願いが叶うというチート級の伝説を持つラブレター。手に入れようとした人も少なくないはずだ。けれど、誰にも見つからずに僕の元まで噂が回ってきた。  それほど高難度の宝探しがたった一日で終わってしまいそうな順調さに違和感を覚えなかったわけではない。  けれどそれも、やっぱりただの悪戯かもと疑う程度だった。  仕掛けた張本人が参加しているなんて思いもしなかった。 「びっくりした? それともがっかりかな」  尋ねる下山さんと身体の前に掲げられた便箋を蛍光灯が白く照らし出した。  七枚目。最後の一枚がそこにある。 「両方だよ」 「それはよかった。がんばった甲斐があったよ」 「努力の方向性がおかしいだろ」 「上手くんに言われたくないね」  彼女はにこりと微笑む。何がよかったのか、僕にはわからない。  今の僕は自分のことすらよくわからなくなっていた。  さっきの答えは嘘じゃない。びっくりもしているし、がっかりもしていると思う。  けれど自分の中にはもっとたくさんの色が混濁して渦巻いていて、はっきりとそれが何色かは答えられなかった。  端的に言えば、混乱していた。
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