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「で、それからどうなったんだっけ?」 「完全下校過ぎても残ってたの先生に見つかって大声で注意されて」 「あれはチャイム壊れてて鳴らなかった学校側の責任でもあると思うのよ」 「それから先生の声にびっくりした美沙が破ったラブレター手離しちゃって、風でグラウンドまで飛んでったんだ」 「あはは、二人であわてて追いかけて回収したよね。さすがに焦ったよあれは」 「ラブレターほど拾われたら恥ずかしいものはないもんな」 「ほんとそれ」  美沙は笑いながらマグカップを両手で持ち上げて口に運んだ。  僕もすっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲む。この話を始めるといつも長くなる。 「上手くんはコーヒー淹れるのうまいよね」 「全自動だからな。てか何回もうち来てんだから知ってんだろ」  二人ならんで床に座る僕たちは、二人そろってマグカップをテーブルに置いた。  ローテーブルの中央には食べかけのケーキが置いてあり、端には腕時計の入った紙箱があった。  僕の好きなファッションブランドのもので、彼女からのプレゼントだった。 「誕生日おめでとう、上手くん」  彼女はあえて昔の呼び方をして、一枚の便箋をこちらに差し出した。  僕は「ありがとう、下山さん」と中央に小さな赤いハートのシールのついた白い便箋を受け取る。  二人が手紙を送り合うときの、いつものやり取りだった。 「進捗何枚?」 「もう数えてないよ」  容量は限られてるもんね、と彼女は笑った。  美沙は付き合い始めてから、記念日や誕生日、クリスマスやバレンタインなど事あるたびに僕へ手紙を書いてくれた。  丸くてかわいい文字で、僕の好きなところを羅列する。時が経つごとに少しずつ文字数が増えていくのを僕も楽しみにしていた。  お返しにと僕も彼女に手紙を送っているので、互いの家にはもう数えきれないほどの便箋がしまってあるはずだ。  僕のラブレター蒐集大作戦は順風満帆だった。
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