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「十数年もの年月、ずっと独りにしてきたこと……謝らせてくれ」
筒路森には、筒路森の事情がある。
二十を超えられたばかりの悠真様が当主になるだけでも大変なことだと察することができるのに、私のことまで気にしていたら悠真様の身が持たないのは容易に想像できる。
「謝らないでください……謝らないで……」
悠真様の熱に包まれた私は、悠真様のお顔を拝見することができない。
それでも、悠真様の腕の中で想うことはひとつ。
私は悠真様に、こんな辛そうな顔をさせるために生まれたんじゃない。
私は悠真様が時折見せてくれる笑顔に心を動かされるからこそ、私は彼が穏やかに生きられるよう努めていきたい。
「遅くなって、悪かった」
私の涙が落ち着きを見せる頃、私は悠真様の熱から解放された。
悠真様と身体を触れ合わせることはできなくなってしまったけれど、悠真様は代わりに手を繋いでくれた。
初さんの前でも手を離さずに、私の手を離さずにいてくれる。
「そんなのはどーでもいいんですけど、結葵様は大丈夫ですか」
妹の傍で待機してくれていた初さんに顔を覗き込まれ、泣き跡を消すことができなかったことを申し訳なく思う。
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