60人が本棚に入れています
本棚に追加
「疲れたよね、少し横になって」
「うん……」
私たちは双子のはずなのに、紫純琥珀蝶に記憶を喰われた妹はまるで幼子に戻ったかのように見えた。
自分の意思すら持つことができず、ただただ起きている出来事を純粋無垢な眼差しで受け入れていく。
「おやすみ、美怜ちゃん」
美怜ちゃんが私の言うことに従順になり、そのまま美怜ちゃんは布団の中へと体を休めた。
筒路森家から多額のお金が送られているのは間違いないらしく、妹を包み込んでいる布団の厚みに安堵の気持ちを抱いた。
「悠真様、ありがとうございました」
妹が寝入った頃合いを見て部屋を後にし、初さんが待機していた廊下へと戻ってきた。
「結葵、少しは姉妹の時間を……」
「妹のことを本気で考えているからこそ、どうして美怜ちゃんが記憶を失ってしまったのか考えないといけないのかなと」
緊張しているわけでも、運動したわけでもないのに、心臓の音がうるさい。
息切れなんてまったくしていないのに、心臓の辺りがざわついている。
「初」
廊下で待機している初さんを呼ぶときの悠真様の声が厳しさを含んでいて、ほんの少し怖いと思った。
でも、それは私を想って発してくれた声だと信じたい。
最初のコメントを投稿しよう!