恋い死に~恋が咲く前に終わらせたかった~

21/21
前へ
/167ページ
次へ
「なんでも話すよ。結葵様に隠し事はできないってことが判明しちゃったわけだから……」 「(うい)さん」  一歩だけ歩を進めて、(うい)さんへと歩み寄る。 「お一人で、すべてを背負わないでください」  悠真様が私に与えてくれた優しさを持って、(うい)さんと接したい。  そんな気持ちはあるものの、自分が理想の優しい声を出せているのかすら分からない。 「一人だけ悪者になろうとするなんて、狡いですよ」  悠真様が出かけられている間、初さんは私の話し相手になってくれた。  寂しさを抱えている私を気遣ってくれて、私を悠真様の元へと連れて行ってくれた。 「悠真様を守るために、自分だけが犠牲になろうとしないでください」  裏では(うい)さんなりの考えがあってのことかもしれないけれど、そんな裏で起きていることなんて私は知らない。  私と接してくれた初さんの、表向きの顔を信じたい。 「俺、狩り人は全員が裏切り者だと言いましたよね? それなのに、俺を良い人に仕立て上げるのはやめて……」 「(うい)」  この声を聴きたいと、身体がずっと望んでいた。 「降参しろ」  こんなにも優しい人たちに、重苦しい空気も世界も与えたくない。 「結葵に協力してもらうからには、隠しごとはできない」  悠真様に名を呼ばれて、身体が泣きたくなるくらいの幸福に包まれる。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加