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「なんでも話すよ。結葵様に隠し事はできないってことが判明しちゃったわけだから……」
「初さん」
一歩だけ歩を進めて、初さんへと歩み寄る。
「お一人で、すべてを背負わないでください」
悠真様が私に与えてくれた優しさを持って、初さんと接したい。
そんな気持ちはあるものの、自分が理想の優しい声を出せているのかすら分からない。
「一人だけ悪者になろうとするなんて、狡いですよ」
悠真様が出かけられている間、初さんは私の話し相手になってくれた。
寂しさを抱えている私を気遣ってくれて、私を悠真様の元へと連れて行ってくれた。
「悠真様を守るために、自分だけが犠牲になろうとしないでください」
裏では初さんなりの考えがあってのことかもしれないけれど、そんな裏で起きていることなんて私は知らない。
私と接してくれた初さんの、表向きの顔を信じたい。
「俺、狩り人は全員が裏切り者だと言いましたよね? それなのに、俺を良い人に仕立て上げるのはやめて……」
「初」
この声を聴きたいと、身体がずっと望んでいた。
「降参しろ」
こんなにも優しい人たちに、重苦しい空気も世界も与えたくない。
「結葵に協力してもらうからには、隠しごとはできない」
悠真様に名を呼ばれて、身体が泣きたくなるくらいの幸福に包まれる。
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