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「政治家や金持ち連中にとって不都合な記憶を、蝶の力で消す」
門を、初めて抜けたとき。
悠真様が、手を繋いでいてくれた。
悠真様が一緒に、白い世界へ足跡をつけることを手助けしてくれた。
「そうやって、筒路森は栄えてきた」
この門に、戻ってくるときも。
悠真様が、筒路森へと迎え入れてくれる。
悠真様が一緒に、白い世界へ足跡をつけることを手助けしてくれる。
「そこまでできるのなら、もう紫純琥珀蝶は管理できているようなものなのでは……」
「いや、できていない。できていないからこそ、多くの人間の記憶が犠牲になった」
もっと、悠真様のためになることがしたい。
こういう欲は、醜いのかもしれない。
もっと相手に尽くしたいと思っても、それは相手にとっての迷惑にも繋がるかもしれない。
(そもそも私の場合は、悠真様に尽くすことすらできていないけれど)
悠真様の力になりたい。
そんな夢や希望を抱いたところで、自分が悠真様のためにできたことなんて何もない気がする。
「この若さで筒路森の当主になったのも……」
「待ってください、その先は言葉にしなくても……」
「両親が蝶の実験に失敗した流れで、だ」
紫純琥珀蝶は、誰を裏切り者と称したのか。
私は蝶のおかげで真実を知ることができたけれど、私が選んだ選択は悠真様を幸せにすることはできなかった。
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