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「おまえみたいな子、生まれてこなければっ!」
「……申し訳ございません」
蝶と言葉を交わすことができる私を、家族は気味悪がった。
おまえは人の子ではないと言われた。
おまえには、人として生きていく価値がないと言われた。
「あなたがいるから、北白川は没落したの……」
「……申し訳ございません」
私は家族の輪から、外の世界へと追いやられた。
いっそのこと殺してくれた方が楽になれたのかもしれないけど、北白川家から遺体が見つかることの方が問題だと父は言った。
だから、私は生かされることになった。
「どうして私の子なのに、こんなにも不出来な娘が産まれたの……?」
「…………」
生きているけど、生きていない。
食べ物も寝る場所も与えてはもらえるけど、ただそれだけ。
ただそれだけの毎日は、繰り返された。
「私がいけないの……? いいえ、私は悪くない……。この子が悪いの……。この子が悪い……」
「お母様、大丈……」
「触らないで! 私が穢れてしまうでしょ!」
母を心配することも、母に触れることも、私には許されない。
私は、家族ではないと烙印を押された子。
これから先も、北白川家の娘として生きていくことは許されないということ。
「……申し訳ございません」
蝶が唄う。
漆黒の世界で、記憶を奪うために唄う。
蝶が唄う。
漆黒の世界で、人々の記憶を喰んで生きる。
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