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「ずっと、ご当主様に好かれるかどうか不安だったの」
その中でも、もっとも多くの金を北白川家に注いでくれる華族に娘の美怜を差し出そう。
父の策略に乗っかった華族の中で、もっとも多額の額をつぎ込んできたのが筒路森家。
「この家には、あの子がいるでしょう。蝶と話ができる子が身内にいたら、私は悠真様から嫌われてしまうと思っていて……」
筒路森家に妹が嫁ぐことで、北白川家には多額のお金が入る。
筒路森家は美しい娘を手に入れ、あとは妹の血を引く世継ぎの誕生を待つだけ。
「すまない、おまえの姉が不出来なばかりに……」
「私が嫁ぐことで、北白川家を救うことができるのなら本望ですわ」
「美怜……ありがとう」
ありあまる財力だけでなく、人々を魅了するほどの美貌を筒路森家は手に入れたかったということらしい。
「筒路森家では、不自由なく生きることができるわ」
「私はお母様とお父様も不自由なく生活してもらうために、この縁談をお受けしますの」
「美怜、幸せになるのよ」
「お母様、泣かないでください」
人々の記憶を奪うと言われている一匹の紫純琥珀蝶が、北白川家の屋敷を訪れた。
蝶に話しかけられた私は言葉を返し、その様子を見たお母様とお父様は私を気味悪がった。
(すべては、私が悪い……)
蝶と会話ができるのは異常なことだって、初めて知った。
蝶と会話ができるのは私だけということを、初めて知った。
私が遭遇した初めては、私の未来を変えてしまうことに繋がった。
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