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「それでこんな無茶したの?」
「う、うん……強力な味方ができたからさ」
聡子ちゃんは俺の横にいる大和君を見た。そしてまた俺の顔をまじまじと見た。
「将ちゃんよりイケメンね」
「え?!今そういうこと言う?!」
すると聡子ちゃんは、大きな口でアッハッハと笑いだした。それはもうジブリ映画のように豪快だったので、俺もおばさんも多分大和君も、目を丸くした。
笑い終わって、聡子ちゃんは今度は床に突っ伏して、うわああんと泣きはじめた。
「さ、聡子ちゃん………?」
ゆっくり手を伸ばして、その背中に触れる。じんわりと温かい背中をゆっくりさする。少しずつ、泣き声が落ち着いてくる。
横からイケメンが首を出す。
「サトコさん、安田がガリ勉してる理由、知ってます?東京のいい大学行って、いい就職先を見つけて、サトコさんをこの町から連れ出すためらしいですよ。どんだけ時間かかるんだよってね」
「うわ、ちょっと!言わないでよ!……あれ?大和君にその話したっけ?」
「おー、本当だった。適当に言ったんだけど」
「えええ」
大和君はケラケラ笑い出す。おばさんはニッコリしながらもまた目に涙を溜める。聡子ちゃんは……
ゆっくり顔を上げて、目を赤くして、まだヒック、ヒックしながら、でもきっと今の聡子ちゃんができる精一杯の笑顔を、俺に見せてくれた。
「将ちゃん、ありがとう。ありがとう、将ちゃん」
そう言って聡子ちゃんはまた、ガーゼで俺の顔についた乾いた血を拭ってくれた。
「将ちゃんカッコいい。こんなカッコいい男の子がそばに居たなんてね、私なんで気づかなかったのかな」
「へ、へへ……」
照れくさくて、目の前にある可愛い女の子の顔が見れない。
「将ちゃんが悪いやつをやっつけてくれた」
「え、へへ。……正確には俺たちが、だけど」
「でも無様なアイツの姿、見てやりたかったな」
「動画見る?」
「いや、やっぱりまだいいわ」
聡子ちゃんは肩をすくめて小さく微笑む。
今は小さくてもいい。これから大きな笑顔を見せてくれたらいい。
飲み物とってくるわ、とおばさんがいうと、大和君は立ち上がって、俺の分はいいです、もう行くんで。と言った。でもその傷じゃ歩くのも辛いでしょう、と聡子ちゃんが言うと、大和君は笑って、俺だけのお医者さんが待ってるんで。じゃあな安田、また明日。と言って玄関から出ていった。おばさんは、イケメンねぇ。とため息をついた。
はぁ。イケメンってどこまでもムカつくな。
あと明日は学校、休みな。
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