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第33話 世界樹の下で
坂上高校2年A組、青木美玖。
入学当初から全女子の憧れだった、容姿端麗な橘大和。彼とはまぁ、いつか付き合えればいいかな。なんて思って適当な男と付き合っているうちに、大和君は不良とつるみはじめ、二つ上のリナ先輩と付き合い始めていた。
2年に上がり、大和君と同じクラスになった。ついに「その時」が来たかと思ったのに、大和君はほとんど学校に来なかった。
夏休みが明け、大和君が登校するようになった。それも毎日!なんだか楽しそうだし、隣の席の地味な安田とも仲が良くなっている。明らかに大和君はなにかが変わった。
それがなにか知りたかった。なにが大和君を変えたのか、知りたかった。
放課後、大和君の後をつけた。大和君の家が駅の向こう側にあることは知っていた。寄り道もせず、大人しくその方面に歩き出す彼に意外さを感じていたその時、彼は突然、空き地に生えていた雑草を引っこ抜いた。そして土を払い、それを持ってまた歩き出した。
何事かと見ていると、彼はとある家の玄関チャイムを鳴らした。中から20半ばくらいの女が出てきた。探検家のような服を着たその女はトレイを待っていて、大和君は雑草をその上に乗せ、女と共に家の中に入っていった。
翌日も大和君をつけてみると、やはり同じように雑草を引っこ抜いて、女の家に行った。
いったい彼はなにをしているのだろう?
あの女は彼女?
雑草集めが趣味の彼女?
安田に探りを入れたが、大和君はサラサの書き心地が好き。というとてつもなくどーでもいいことしかわからなかった。使えないやつだ。
でも大和君が花火大会に誰かと行くらしい。ということだけはわかった。そこだけは褒めてやる。
ある日、駅前で友達と待ち合わせをしている時、例の女を見かけた。いつみても探検家の格好をしているその女は、ベンチに腰掛け、誰かを待っている。
そのうちに杖をついたおじいちゃんがやってきた。女は立ち上がって挨拶し、2人は並んでベンチに腰掛けた。
女がおじいちゃんに紙袋を渡す。
「いつもありがとうね。レンさんの薬はほんとにね、よく効くんだよ」
「よかったです。長生きしてくださいね」
和やかに会話する2人は、そのあと仲良く、月月火水木金金〜と軍歌を歌っていた。
女はレンというのか。
薬屋か?漢方薬的なものを作っているのだろうか?それなら大和君が雑草を引っこ抜いて持って行く理由もわかる気がする。
私はあの女に接近する方法を考えた。
そして家を見張り、女がいつものように探検家ルックで出たところを尾行した。
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