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「……大和君!優勝おめでとう!」
「青木!サファリな格好した女の人、知らない?」
大和君が私の前で、私以外の女の話をする。
「さ、さあ」
「見つけたら教えてくんね?」
「大和君の彼女さん?」
「そーなる予定」
今、大和君の前にいるのは私なのに、大和君の見える世界に私はいない。そんな事を嫌でも思い知らされる。
邪魔者はさっさと大和君の世界から消えてほしい。
つい、その黒い気持ちが口から出てしまった。
「今頃誰かと仲良くやってんじゃない」
大和君はそれを見逃さなかった。
「……青木、レンさんのことなんか知ってる?」
「いや、なにも」
「そーいやあのあとどこいってた?」
「別に、お手洗いに」
「……悪いけど、ケータイの通話履歴、見せてくんね?」
大和君が手のひらを私にむける。
その目は、冷たい。
そんなに。そんなにあの女がいいのか。
どう見たって私の方が可愛いのに?若いし?可愛いのに?こいつ見る目ないんじゃないの?
急にどうでもよくなった。
「あの人なら体育倉庫にいるよ。媚薬飲んだ真島と一緒にいる。あの薬が本当に効くなら今頃仲良くやってるんじゃない」
「は?」
「真島が飲んだドリンク、あれ、あの人が作った媚薬入り。本当は大和君に飲んで欲しかったんだけどね。真島達の仲良し現場、突入してみたら?」
ケータイの代わりに倉庫の鍵を差し出す。
大和君は一瞬ひるんで、それから鍵をひったくって、ついでに私の腕も掴んで、倉庫へと走り出した。
――
「媚薬、大和君に飲ませたかったのに、真島先生が飲んじゃうからさ。ちょうど目障りなレンさんがいるし、そことくっついてくれたらちょうどいいなって思って。まぁバレちゃったからどーでもいいけど。それだけだけど?」
「開き直りがすごいねぇ。……え。っていうか薬飲ませたかった相手って大和くんだったの?」
「そうだけど?こんなイケメン滅多にいないもん」
「はー?!大和くんにこんな危険なもん飲ませようとすんじゃないわよ!」
「作ったの自分じゃん」
「ダメ!大和くんはダメ!絶対ダメ!」
「俺は……??」
小さく悲しげな声をあげる、ぐるぐる巻きの真島の側で、レンと青木のやり取りを見守る大和。青木をジリリと睨んでいるが、その顔はどこか嬉しげだ。
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