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「まったくうるさいな。私はただ大和君と一回だけでもできればよかったの!なのに大和君、レンさんレンさんって!全然私のこと見てくれない。ムカつくこの女!邪魔なのこの人!」
「ちがうね」
荒ぶる青木を、レンさんが珍しく落ち着いて、真っ直ぐ見据えている。
「青木さん、一回だけでいいなんて嘘でしょ。あなたが欲しいのはそんな軽いものじゃないでしょ。体の繋がりが心の繋がりと違うことは、きっと痛いほどわかってるでしょ」
「……」
「にしても不思議でしょ?あなたより若くもなく特段可愛くもない女が、なんで大和くんに慕われてるのか」
「さすが、大和君に溺愛されてるだけあるね。おばさん自分に自信があるんだね」
「青木、失礼なことを言うんじゃない!25がおばさんなら、29の俺はどうなる!」
ミノムシが喚いてる。
「私、自信はないよ。ただ自分が大事なだけ。私は自分のことを、とってもとっても大事にしている」
さすがトリカブト。トリカブトを食った人の言葉は重みが違う。
「青木さんも自分のことを大切にできたら、自然といい人に出会えるよ」
「綺麗事ウザいんですけど。男なんて、みんなやることやったら終わりじゃない。顔のいい女は減点式とか言って、すぐ飽きて……そう、男っていっつもそう。みんな変わらない。言い寄ってくる目的はいつもアレ。やめてっていっても変わらないし、そんなこと言ったら冷めた萎えたって言われて捨てられるし」
そう言って俯く青木。
こいつ、なかなか苦労してたんだな。少し同情してしまう。
でもレンさんを閉じ込めた罪は重い。
「俺はそういう目的ももちろんあるけど、それだけでレンさんを口説いてるわけじゃない。男が全員そういうやつみたいに言うな」
「そうだぞ青木!俺がいい見本だ!」
「真島先生はなぜ女性経験がないんですか?」
「え?そこ深掘りします?」
レンさんからの思わぬ奇襲にダメージをくらう真島。
「あ、あ、いや、その、……俺は青木と少し似ているかもしれない、です」
「一緒にしないでほしいんですけど」
「……初めて付き合った人には、顔はいいから付き合ったのに一緒にいても面白くないって言われて。次に付き合った人とは、そういう場面になった時、最初の人に言われたことを思い出してしまって、うまくできなくて。また次も、その次も……。
だんだん恋愛が億劫になって、怖くなった。手っ取り早くお店に行くのも考えたんだが、やっぱり、心の繋がりがあってこその、そういう関係だと、俺は思うから……」
「……」
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