第35話 師匠の言い分

1/3
前へ
/134ページ
次へ

第35話 師匠の言い分

 「私も飲んじゃったの、媚薬。知らなくて。身体中、切なくて仕方ないの。少しだけくっついてもいい?」  薄暗い部屋で好きな女に押し倒されて、切なそうな目でそんなこと囁かれて、断れる男がいるだろうか?  いや、いない。 「……いーですよ。いっぱいきて」  そういうとレンさんは、いつも俺がそうするように、俺の首元に顔を埋めた。同時に熱い体がピッタリと密着する。 「……大和くんのにおいだ」  耳元で吐息混じりに囁くレンさん。  のしかかるその小さい背中に手を回し、撫で回す。  下着の凹凸がよくわかる。  レンさんが切なげな息を漏らす。それがもっと聞きたくて、耳を甘噛みして、息を注ぐ。 「ちゅーする?」  レンさんは少し体を硬くして、それから頷くような動作をした。  頭と腰を抱えてゴロンと倒し、形勢逆転。  マットにダラリと寝転がるレンさんの顔は、いつになく蕩けていて、物欲しそうだった。  だらんとする両手に指を絡めて、マットに縫い付けて、そのまま顔を近づける。  レンさんは長いまつ毛を伏せて、口を少しだけ開いた。   「やま」  何かを言おうとしたその口を塞いだ。離しては塞いで、離しては塞いだ。にゅるりとした感触、エロいキス。入れて、出して、つつき合って、エロいキス。  本人は無自覚なんだろうが、レンさんの腰が小さく、規則的に揺れ始めた。  早く来て、とでも誘うかのように。  早くいきたい。    でもちょっとだけイジワルしてやりたい。そんなことを考える余裕はまだあった。 「どーしたの。腰、揺れてるよ」 「ちが、気のせい」 「レンさんのえっち」  レンさんは恥ずかしそうに目を逸らす。  片手を解き、その欲しがりな腰を撫でる。  その手を這わせて、体の上へ。レンさんは急に慌てた顔をする。 「はぁ…柔らかい。でけー」 「あ、やっぱりダメ」 「だめ。もー逃げれません」 「ダメダメ、くっつくだけ!」 「誘ったのはレンさんでしょ」 「真島先生と2人きりでずっと我慢してたから、爆発しちゃって、つい……」 「……真島に欲情してたの?」 「そういう薬なんだってば……んッ」 「俺を煽るのが上手だね、レンさんは」
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加