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第36話 バラパーティー①
球技祭から数日後。
ご褒美の「バラパーティー」の日がやってきた。
バラパーティーがなんなのかよくわからないが、その前に。
「パーティー前に、大和くんの植物を買いに行こう!」
レンさんとの園芸店デートだ!
髪もバッチリセットして、待ち合わせ時間より10分早く駅につき待っていると、見慣れたサファリ姿の……
サファリじゃない!レンさんが現れた。
「どーしたの。今日はサファリじゃないの?」
「今日はバラパーティーもあるからね。ローズ色のスカートにしてみました」
「かわいい。今日のレンさん、すげーかわいい」
照れて肩をすくめるレンさんは、白いブラウスにローズ色のロングスカートという、まじでかわいい恰好をしていた。
「大和くんはいつもかっこいいね」
「……今日のレンさんに言われると、参るな」
なんだか別人と会っているようだ。いつもよりドキドキする。
レンさんの顔がまともに見られない。
いつもなら簡単に掴める手も、少しふれるだけで心臓が跳ねる。
レンさんも終始、照れたような顔をしている。
やべー。
恋してるって、感じだ。
君に届け。
「ところで師匠。大和君から聞きましたけど、毒薬を作っているんですか?それで誰か仕留めるんですか?毒薬作りの進捗状況は?」
俺たちの桃色の空気に、遠慮なくポイズンを投下する青木。
なんでこいつはここにいるのだろう。
今日お前に召集かけてないんだけど??
「青木さん、その話は絶対にここだけの秘密だよ。進捗はね、もう準備完了。あとは実行に移すだけ」
「は?!もう最強の毒薬、完成してたの?」
「うん。いやぁ、長い道のりだった」
「いつ実行すんの?ターゲットが今どこにいるのか把握してんの?どうやって飲ませるの?」
「場所は大丈夫。方法も考えてある。でもタイミングがね……モノがそろっても、タイミングが難しい」
「まだやらなくていーよ。アイツの毒殺はもうちょっと待とう」
「『もうちょっと』?毒殺は止めなきゃだめでしょ?あんた感覚狂ってるよ??」
レンさんと邪魔者と電車に乗って数駅。そこにレンさんオススメの大型園芸店があるという。
そこは大きなショッピングモールの中にある店で、確かに今まで行ったどの園芸店よりも巨大だった。
園芸店くるの人生で2回目くらいだけど。
レンさんは楽しそうにくるくると店内を回り出す。
「大和くん大和くん、庭の大和くんスペースに植えるのはどれにしようか。この季節、私のオススメはビオラ。今買えば4月ごろまでなんと半年もお花が楽しめる!なんてコスパのいいお花でしょう!種類もいっぱいでかわいいよ。
いやでもやっぱり植物を育てる練習となると、種からがいいかもしれない。この『忘れな草』なんてどう?春には青くてかわいいお花が沢山咲くの。花言葉は『真実の愛』。なんて素敵なんでしょう」
「男にはかわいすぎねー?」
「君みたいなヤンキーが可愛いお花育ててるなんて聞いたら、そのギャップに女はときめいてしまうものだよ」
「それにします」
「師匠、ベランダで育てられるお勧めの植物はありますか」
「お花なら、ちょうど今の時期に球根を植えるアネモネはどう?風にそよぐ姿が可愛いの。春が楽しみになるよ。観葉植物ならアイビーとかかな。でもちょっとハダニがつきやすいかなあ」
俺は知っている。
アネモネの花言葉は「私を見捨てた」。
アイビーは「死んでも離れない」。
「ヤンデレ花言葉植物集」に載ってた。
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