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結局、俺は忘れな草の種を、青木はアネモネの球根と鉢を、レンさんに買ってもらった。
レンさんはビオラ3株、シクラメン1株、アリッサム1株、ネメシア2株、チューリップの球根10袋、水仙の球根2袋、ムスカリ、クロッカス、スノードロップ………………
いっぱい買ってた。
大荷物を抱え、ショッピングセンターのフードコートでひと休み。
レンさんと青木が、先にランチを注文をしに席を離れた。
椅子にだらんと座る。
にしても。
レンさんが最強の毒薬を完成させちまった。毒殺なんて、なんだかんだいって冗談だろうとどこか軽く流してきていたが、急に現実味が増してきた。
早く駿河をとっ捕まえねえと。でもどこにいるかも、どうやって捕まえるかも、なんにもわかんねー……
脱力していると、後ろからトントン、肩を叩かれた。
「やーまーと!また会っちゃったね!」
振り返ると、ニッコニコの元カノ・リナ。花火大会で会って以来だった。
「おー」
「ねぇどうしちゃったの大和。今日は美女2人も引き連れてるじゃない。ついに1人じゃ満足できなくなったの?」
「ちげーよ。1人はただのストーカー」
「あら〜。イケメンは大変ねぇ」
「俺のじゃない。レンさんの」
「あらら〜??」
リナが隣の空席に座る。
懐かしいボディソープの香りがした。
「そこ。レンさん戻ってくるから。どいて」
「えー?いいでしょ少しくらい。この前あんまり話せなかったから。喋ってみたいなぁ、レンさん」
「いーから。リナとレンさんじゃ会話が噛み合わねーだろうし」
「そうー?あ、あそこ。私の新しい彼氏。リョウ君!」
リナが大きく腕を振る。離れたところに、こちらを睨んでくるいかつい男と、数人の連れが見えた。
「……彼氏嫉妬するんじゃない。早く戻りなよ」
「大丈夫よぅ、優しい人だもん」
リョウ君はリナに見えない角度で中指を立ててくる。
でもこれぞリナ、という懐かしい気持ちにもなる。
リナは彼氏がいたって、平気でほかの男と遊ぶ。それを悪いこととは思っていない。良くも悪くも自由で奔放な女なのだ。
かつてその奔放さに救われたのも、また事実。
「それで?どうなの。もうできたの?レンさんとは」
「リナには関係ねーだろ」
「気になるなぁ、大和がどうやってほかの女の」
「リナ。そういう話はもうしない」
「大和君。まじめだねぇ」
横にはニコニコと笑うリナ。
の、後ろに、料理を持った真顔のレンさんと青木。
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