第37話 バラパーティー②ー安田の場合

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第37話 バラパーティー②ー安田の場合

「……ねえ。どうしたのこの空気。なぜ青木さんはあんなに禍々しいオーラを発しているの。なぜレンさんはあんなに首が曲がっているの。大和君は……大和君は大和君だね」 「午前中、色々あって」 「最近『色々あって』で説明片づけすぎてない?俺全然話についていけてないんだけど?」  大和君とレンさんが午前中、数駅先のショッピングモールにある園芸店に行くことは聞いていた。青木さんもいるとは聞いてなかったけど、弟子だからな。弟子だから当然、師匠のデートにも随行するんだろう。  #弟子とは    俺と聡子ちゃんは、午後からレンさんの家に集合だった。バラパーティーってなにするんだろうね、と聡子ちゃんと仲良く歩いてきて、ついたらこの空気。     涼しい秋晴れの空の下、庭には満開のバラの香り。  なのにこの、重苦しい空気!  もったいないよ!今この瞬間を!楽しまないとさあ!  とりあえず、準備だ。   「レンさん、紅茶、淹れちゃっていいですか?」 「うん。聡子ちゃん、ありがとうねぇ」 「師匠、ケーキ切りました。こんな美味しそうなケーキのご用意、ありがとうございます。一番大きいのをどうぞ。大和の奴には一番小さいのをあげときます」 「うん。青木さん、ありがとうねぇ」  庭のベンチに座り、ただただうなずいているレンさん。おばあちゃんみたいになっている。  俺は庭に広げられたレジャーシートに座り、不穏な空気には負けず、ルンルンでケーキと紅茶を待つ。   「それじゃぁ、パーティーをはじめましょうかねぇ」  準備が済み、みんながシートに座る。レンばあちゃんはベンチから立ち上がり、甘い香りを漂わせるバラの木のそばにたった。  そしてその花弁に優しくふれ、何か小さくつぶやいた。 「きた……!くるぞアレが……!」 「なにが?」 「そうか、青木さんは見たことないんだよね。きっとにわかには信じがたい、素晴らしい光景だよ」
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