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レンばあちゃんに触れられたバラの木は、突如グングンと空に向かい伸び始めた。そして何十……何百といった大輪の白色の花を枝いっぱいに咲かせながら、レジャーシートに座った俺たちをドームのように覆った。
青木さんは驚きすぎて、目をかっぴらいている。
聡子ちゃんはプリンセスのように、かわいく小さく拍手する。
レンばあちゃんが背中を丸めて、ドームの中に入ってくる。
「うん、いい感じにできましたねぇ」
圧倒的イリュージョンのおかげで不穏な空気が若干和らいだところで、俺は勇気を振り絞る。
ケーキをほおばりながら、改めて話をぶつけるのだ。
「それで……午前中、何があったんですか?」
青木さんが瞬時にキッ!となった。
ふーっと息を吐いて、大和君がイケメンっぽく話し出す。
「園芸店の帰り、ショッピングセンターに俺の元カノがいたんだよ。あの人自由すぎる人だから変に絡んできちまって。レンさん、嫌な思いさせてごめんね」
「いいんだよ……若者は若者で楽しくやりなさい」
「急に歳とらないで。俺が好きなのはレンさんだけだよ」
「リナ先輩、高校にいるときから男タラシって聞いてたけど、今日初めてまともに見たらほんとにヤバかった。ヤバすぎ。ただのビッチ。ビッチビチのビッチじゃん」
青木さんが憎たらしそうに言い捨てる。
「リナ……って、もしかして、赤城リナ?」
「そーだけど、サトコちゃん何で知ってんの?」
「大学の同級生だよ~、いつもカッコイイ男の子と一緒にいる気がするなあ」
聡子ちゃんは紅茶を飲みながら、のほほんと答える。
聡子ちゃんは最近、大学に再び通い始めたのだ!
「まじか。あの人かわんねーな」
大和君がバラのドームの天井を仰ぎ見る。
「あんたよくあんな女と付き合ってたね?なんで付き合ったの?」
信じられない、という顔をしてケーキを食べる青木さん。
「あの人、あー見えてもいいところもあんだよ。俺がすげーつらかった時、俺のこと全部受け止めてくれたし。そん時リナ彼氏いたから、俺が寝取……奪う形になっちまったけど」
「……もしかしてその彼氏って、3年B組のあの先輩? だからあんた3年とバチバチやってるの?」
「そ。リナに捨てられた後もあの人、横取りした俺のことが許せないらしい」
「はー。バカね。男ってほんとバカ」
青木さんの毒舌に磨きがかかっている。
大和君がバラを眺めながらそんな話をしている間に、レンばあちゃんはさらに歳を重ねた。
それに気づいたのか、大和君は慌てて話題を変えようとする。
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