第37話 バラパーティー②ー安田の場合

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 レンばあちゃんに触れられたバラの木は、突如グングンと空に向かい伸び始めた。そして何十……何百といった大輪の白色の花を枝いっぱいに咲かせながら、レジャーシートに座った俺たちをドームのように覆った。    青木さんは驚きすぎて、目をかっぴらいている。  聡子ちゃんはプリンセスのように、かわいく小さく拍手する。  レンばあちゃんが背中を丸めて、ドームの中に入ってくる。 「うん、いい感じにできましたねぇ」  圧倒的イリュージョンのおかげで不穏な空気が若干和らいだところで、俺は勇気を振り絞る。  ケーキをほおばりながら、改めて話をぶつけるのだ。 「それで……午前中、何があったんですか?」  青木さんが瞬時にキッ!となった。  ふーっと息を吐いて、大和君がイケメンっぽく話し出す。   「園芸店の帰り、ショッピングセンターに俺の元カノがいたんだよ。あの人自由すぎる人だから変に絡んできちまって。レンさん、嫌な思いさせてごめんね」 「いいんだよ……若者は若者で楽しくやりなさい」 「急に歳とらないで。俺が好きなのはレンさんだけだよ」 「リナ先輩、高校にいるときから男タラシって聞いてたけど、今日初めてまともに見たらほんとにヤバかった。ヤバすぎ。ただのビッチ。ビッチビチのビッチじゃん」  青木さんが憎たらしそうに言い捨てる。   「リナ……って、もしかして、赤城リナ?」 「そーだけど、サトコちゃん何で知ってんの?」 「大学の同級生だよ~、いつもカッコイイ男の子と一緒にいる気がするなあ」    聡子ちゃんは紅茶を飲みながら、のほほんと答える。  聡子ちゃんは最近、大学に再び通い始めたのだ!   「まじか。あの人かわんねーな」  大和君がバラのドームの天井を仰ぎ見る。   「あんたよくあんな女と付き合ってたね?なんで付き合ったの?」  信じられない、という顔をしてケーキを食べる青木さん。   「あの人、あー見えてもいいところもあんだよ。俺がすげーつらかった時、俺のこと全部受け止めてくれたし。そん時リナ彼氏いたから、俺が寝取……奪う形になっちまったけど」 「……もしかしてその彼氏って、3年B組のあの先輩? だからあんた3年とバチバチやってるの?」 「そ。リナに捨てられた後もあの人、横取りした俺のことが許せないらしい」 「はー。バカね。男ってほんとバカ」  青木さんの毒舌に磨きがかかっている。  大和君がバラを眺めながらそんな話をしている間に、レンばあちゃんはさらに歳を重ねた。  それに気づいたのか、大和君は慌てて話題を変えようとする。
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