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「え」
食わしてって。
門口は、私のジェノベーゼをフォークで一巻き分取ると、いいとも言ってないのにパクりと口に頬張った。
「あ、見た目と違う。エグくない」
そして、とても満足そうな顔をする。
その顔、ペコが茹でたブロッコリーを初めてたべた時の顔に似ている。
「……ふ、犬か」
思わず吹き出して下を向いた。
「は? 普通、そこ ″子供か″ だろ? 何だよ犬って」
顔を少し赤くして笑う門口は、ちょっとだけ可愛い。
「ほら、お前も食えよ。ミートソース」
そして、自分のフォークで巻き付けたそれを、私の前につき出す。
え、
それ、
間接キスよりも秘密ですけど?!
「お前、トマトアレルギーとかじゃないんだろ?」
「そうだけど、でも」
「さっさと食えよ」
せっかちな表情に変わった門口に負けて、仕方なくそれをパクっと口にする。
「……うまい?」
もう、ドキドキなんてしないと思ってたのに。
「は、い。……トマトと、バジルの味が混ざって絶妙で」
性悪なはずの社長に、トキメキを覚えてしまった。
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