210人が本棚に入れています
本棚に追加
久しぶりに見るマニュアル車のギア。
パニクってるところへ、
「あ、そうだ」
門口社長がヘルメットを脱いで助手席に乗り込んできた。
「な、なんですか?」
接近した門口から、フワリと大人の香りがした。
多分、VVLGARIだ。
「今から別の現場を見に行かないといけないんだ。丁度そこのダンプ空いたからそれここに回す。アクセスリースまでの途中だから乗せてけよ」
「だからぺーバーだって言ってるじゃないですか?! 」
帰社だけでいっぱいいっぱいなのに、お客様乗せて寄り道なんて恐ろしくて出来ない!
それなのに、
「死ぬときは一緒だな」
門口は悠々と長い足を組んで発進を待っている。
「縁起でもない」
「安心しろ、大怪我して身体が不随になったら責任持って面倒みてやるから」
ドキッ。
なに、それ。
「……プロポーズですか?」
ちょっとトキメいたじゃないの。
「そんなわけないだろ。いいから早く動かせ」
「本当に知らないですからねぇ」
久しぶりの運転、プラス俺様社長様の送迎。
半端ないドキドキで、ハンドルを握る手は汗をかきまくっていた。
……てか。
ダンプ運転出来るんなら、あなたがしたらいいんじゃないの?
心の中で軽く突っ込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!