反発中

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✤ うちのお母さんは、3年前に心臓を患って亡くなった。 亡くなる前の二年間はほとんど入院生活だったけれど、それでも最期までとても気丈で明るい人だった。 「もう、お父さん耳が遠いから声を張るのに疲れるー」 お母さんのこの口癖も、愛情表現だったように思う。 片方の聴力を幼い頃に無くしたお父さん。 補聴器がまだ充分でなかった時代。 学力もみるみる低下し、高校進学を諦めたあと、近所の工務店で見習いの生活を始めた。 その工務店の娘がお母さんだった。 二人の馴れ初めや恋愛話は、耳にタコができるほど聞いた。 そんなにお互いに思い合ってたのに、お母さんの葬儀の時も、お父さんは泣かなかった。 男女の愛情の差を感じてガッカリしたの覚えてる。 トントントン…。 GW初日の朝。 連日の残業でゆっくり寝たかったのに。 まだ眠たい私を起こしたのは、お父さんの金槌の音だった。 家の倉庫の屋根でも直してるんだろうか? 休みの日なんだから、もう少し気を遣ってよ。 「…ふぁ」 欠伸をしながら、台所に向かうとペコが尾っぽを振って近寄ってきた。 「おはよー、ペコ、ご飯は食べた?」 しきりに私の手をアマガミするあたり、まだなんだろう。フードを出していると、 RiririrIririririri 私のスマホに着信が。 ん? 誰だっけ? この番号。 「もしもし…?」
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